自民党総裁選挙
自由民主党の総裁選挙が雨の決戦で終わり、初の女性総裁が誕生しました。
女性というバイアスを抜きにしても、彼女は現在の自民党の保守本流の真っただ中にいます。早速、党人事や内閣人事の予想が出始めてマスコミを賑わしておりますが、お世話になった方への恩返しというのを事初めにされているようです。正に昔の自民党に戻ったようで、これが保守本流というやつなのでしょうか。
義理人情と貸し借りの世界
私たちからすると、一国のトップたるものが個人の義理人情や貸し借りの世界を最優先するのではなくて、国民から選ばれた代表として、国民のためにする人事を優先して欲しいと願う訳なのですが。選挙では、85才のしかめっ面の、右向け右の鶴の一声で、雪崩を打ったように一斉に勝ち馬に乗ろうと走り出す様子は滑稽でもありました。とはいっても、本人たちは至って真剣で、政治家になったからには末は大臣か総理か、という夢は誰しもが持っていて、その夢への執着も私たちには想像もできないくらい強いものなのでしょう。節操とか、信念とか、国民のためとか、そんな絵空事にとらわれているヒマはない、というのが本音なのではないでしょうか。

保守回帰の潮流
保守回帰、極右の台頭は、日本の参政党の躍進だけでなく、世界的な兆候であり、ナチスを生んだドイツでさえ、極右が台頭しつつあります。自国第一主義、選民思想が世界に蔓延しつつあり、国連というリベラルの象徴のような場で、世界の第一国の大統領が堂々と国連の存在そのものを否定するという前代未聞の出来事さえ、何となく受け入れてしまったかのような反応でした。現在の世界の経済動向は、決して大恐慌時代のように多くの人民が今日明日食うにも困るという状況ではありません。現に、日本では日経平均株価が今日も最高値を更新しているぐらいです。それでも、私たちは生活に苦しい、もっと物価を下げてくれ、と切に願っています。裏返してみれば、それに見合うだけの給料がもらえていない、ということです。海外からのインバウンドが大挙して日本に来るのは、為替が安い上に安全だからではないでしょうか。マックがセットで500円なんてあり得ないくらい安い、と感じるのでしょう、うらやましいことです。
かっての勢いを失った現実
日本では、失われた20年とか言われていますが、今の為替のレートを見ても、私たちはこの間に世界の先進国から中進国になってしまったのではないでしょうか。そこには、これまでの政治の責任は大きいと思います。ただ、これはアメリカしかりイギリスしかり、どこの国でも多かれ少なかれ、かっての勢い、栄光というものを失いつつあるような気がします。そこに付け入るのが、今の保守本流の流れなのかもしれません。かっての栄光よ再び、私たちはそれを取り戻します、だから選ばれし自国民以外は追い出します・・・ということでしょうか。
歴史を戻すことはできない
だが、常に時は流れ、歴史は動いていきます。いったいいつの時代、時点に戻るというのでしょうか、いったい誰を指して自国民とするのでしょうか、どうすればそこまで時を押し戻すことが可能なのでしょうか。・・・そんなのは不可能ではないでしょうか。
高度成長の時代には、ある意味余裕があって、今日の損は明日明後日で取り戻せる、借金してもいつかは返せる、という確信がありました。ですから、リベラルな考えでヒューマニズムを掲げ、武士は食わねど高楊枝ではないけど、若干無理してでも、弱きものたちを守り食べさせてあげることができました。今は、そんな余裕が各国に無くなってしまい自国のことで精一杯、だから古き良き時代に戻ろうという考えに人が集まるのでしょう。
足元を直視する
今回の自民党の新総裁の勝因は、全国の党員票にあった、と言われています。我らが地元の強き自民党を取り戻すためにはタカ派が良いと党員は判断し、それに議員が同調したという構図なのでしょう。
それでも、昔に戻ることはできません。
例えば、誰が3K6Kの仕事をこれからやるのでしょうか、人口の1/3が高齢者となった国で、自国民だけでその高齢者を面倒見きれる、とでも思っているのでしょうか。困ったところだけ他国に助けてくれって、そんな都合の良いお願いをするなら、倍の給与を払わなくては来てくれません。ただでさえ、自国民のエッセンシャルワーカーの賃金の低さが問題になっているというのにどうしますか。・・・
繰り返しますが、歴史は戻りません。そして、政治はショーでもないし、政治家はタレントでもない。
私たちは、今ある現実、取り巻かれている環境を直視し、決して実現しえない夢などに騙されることなく、これからの私たちにできることをしっかりと見据えて、前を向いていくことが大切なのではないでしょうか。
人間と同じで、若かりし頃には戻れないのですから。










